レクシプローラの英語放浪ブログ

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【倒置】英語の倒置は強調のためだけではない!倒置に気づくと英語はすらすら読める!

 

まず「倒置とはなにか」から

倒置というのは、言語における修辞法(文章の表現を豊かにする技術)のうちの一つで、語順を入れ替えることを指します。

日本語でも倒置というのは存在していて、例えばワンピースの主人公ルフィの有名なセリフに「海賊王に俺はなる!」というものがありますが、これを「俺はなる!海賊王に!」にすると、なんか「こいつマジで海賊王になりたがってんな」って感じがしなくもないですよね。「海賊王」という語が強調されている感じがします。

さて、倒置は国語の授業でも習いますから、なんとなく「強調」の役割があることには合点がいくでしょう。ところが、これ以外の役割もあるんです。というか、英文法においては、これから紹介する役割のほうが重要かもしれません。いったいどのような役割を持っているのか、一緒に学んでいきましょう。

 

倒置の役割はこの3つ

ここで扱う倒置の役割は以下の3つです。

・強調

・文構造の明確化

・新情報の提示

 

まあ強調はもうだいたいわかるでしょうから、他2つについて、詳しくみていきましょう。

 

※注意

ちなみに、倒置にはまず大きく分けて「強制倒置」と「任意倒置」というものがあります。強制倒置というのは、例えばYou are happy.を疑問文にするときに、Are you happy?と語順を変える(倒置する)ように、文法の決まり上絶対に倒置しなければいけないときのものです。

一方で任意倒置というのは、その名の通り、話し手や書き手がしたいときにする倒置です。この任意倒置の役割を、上記に示す3つとしています。言語学的には厳密には違うかもしれませんが、受験生はこれくらいの理解で十分です。

 

 

文構造の明確化

倒置による文構造の明確化とは、例えば第5文型SVOCの文を書こうとするときに、Oがめっちゃ長くなってCが見えにくくなりそうなときに、語順をSVCOに変更する場合を指します。

※こうした倒置に関して、倒置ではなく「語順転倒」であるとする立場もあるようです。

 

例えばこんな文があったとします。

 


文構造は以下のようになっています。


これ、補語Cを見つけるのちょっと難しくないですか?Oを見つけてからCが出てくるまで距離があります。そのうえ、解釈の可能性として、known to the parentsがa girlに対する修飾をしているということもあり得ます。「両親に対して知らされた女の子を彼が殺したという事実」みたいな訳があり得るということです。このように、目的語が長いせいで、解釈があいまいになったり、わかりにくかったりするときに、あえてCを先に出して、長いOを後ろに配置するということがあります。

 

こんな感じに…

 

我々日本人からすると、こんなことされたら、文構造がわかりにくいと思うかもしれませんが、こうした倒置は、文の構造を分かり易くしようという、筆者の親切心からくるものです。まあよく考えたら、Vの後に来た1語の形容詞なんて、補語Cくらいしかありませんから、いったんCにしといて、次に名詞が出てきたなら、文の要素で今唯一余っているOということにすればいいのです。

 

以上のように、文構造の明確化のために、倒置が起こることがあります。

 

新情報の提示

there be構文の正体

ここ最近の、特に英文読解や長文読解の参考書によく「there be構文は新情報!」と書かれているものを見ます。これ、倒置の性質がわかると、ちょっと違った理解ができるんです。

 

そもそもthere be 構文って何なのかをまずは説明します。なんとなくわかるって人も、いったん読んでくださいね。

 

「私はここにいる」という表現を英語でしようとするとき、「I'm here.」と書きますよね。じゃあ、「たくさんの生徒がそこにいる」ならどうでしょう。同じ理屈で、「A lot of students are there」になりますね。

 

 

じゃあ二つ目のA lot of students are thereを倒置させてみましょう。すると、「There are a lot of students」になりますね。あれ、これなんか見たことある形ですね。

 

そうです。There be構文というのは倒置によって生まれたものなのです。ちなみに、thereは「そこ」ではなく「そこに」という意味の副詞です。Hereも同様に「ここに」を表す副詞です。名詞ではないことに注意しましょう。以上の内容から、構造自体は以下のようになるわけですね。

 

 

何のために語順を変えたのか

さて、なんのために語順を変えたのか、それは「新情報の提示」のためです。ではなぜ、倒置させることが「新情報の提示」につながるのでしょうか。

 

実は、英語は基本的な考え方として、「旧⇒新」の流れで情報を出していくようになっています。つまり左から英文を読み始めて、右にいくほど情報が新しいということです。最後に来る語というのは、比較的新たな情報として、読み手ないしは聞き手に与えられるのです。まあこれは、少し考えてみれば合点がいく話で、私たちは、最初に述べられたことよりも、最後に述べられたことの方が記憶には残りやすいはずです。例えば、極端な話ですが、私が当記事の冒頭に書いたことを覚えていますか?私ですら、見ないと思い出せません笑。でも今読んでいることは頭に残ってますよね。私が「私ですら、見ないと思い出せません笑」とさっき言ったのも、今はまだ覚えているはずです。最後に見たものの方が、記憶には新しく残るのです。

 

となれば、最後に来た情報というのは、聞き手に知ってほしいことのはずです。そして知ってほしいということは、聞き手がまだ知らないということです。よって、わざわざ倒置までさせて、文の最後にずらしたその情報は、新情報といって差し支えないでしょう。

先ほどの例文に戻りますが、例えば長文を読んでいて、「There are a lot of students」と出てきたのなら、それ以前を読んでいても、生徒の情報は得られなかったということです。新情報なのだから当然ですね。

 

このように、倒置によって、読み手や聞き手にとって新たな情報を提示できます。つまり「There be構文は新情報!」というのは、もっと一般化して、そもそも倒置が来たら新情報かも!くらいまで理解しておくと良いでしょう。

 

実際に英文解釈をしてみよう

実際に倒置を読み取るにはどうすればいいのか、問題にチャレンジして理解しましょう。

 

"Hidden Masses." The Economist, 7 July 2018より引用

 

【解説】

文頭にmore significantとあります。significantは「重要な」という形容詞であること、さらにmoreも基本的には形容詞につくことから、普段のように、more significantをSとすることはできません。主語Sになれるのは名詞だけだからです。形容詞になった以上は、名詞を修飾するか、補語Cになるしかありません。周辺に修飾できる名詞もなさそうなので、文頭に主語もないし、形容詞残ったし、倒置が来るかもと予測しておきましょう。普段通りの語順にならないのが倒置ですから、これくらいの予測ができると上出来です。

そうして読み進めるとisが出てきたのでこれをVに、その後ろにあるthe government’s willingness~をSにします。いつもならこれを補語Cにしたいところですから、先述した通り、動詞を見つけた段階ですら主語がない状態だったので、仕方なくSにするしかありません。

以上の内容から、以下のように構造をみとることができます。訳もついでに示しますね。

 

 

 

おわりに

倒置は強調だけが目的ではありません。筆者は必ず、意図をもって文を倒置させています。「違和感に気づいて倒置を見つけること」「なぜ倒置したのかを考えること」これらを意識して、英文を読めるようになると、長文読解もかなり楽になるでしょう。