共通テストに変わってからの、受験生の心境の変化
センター試験から共通テストに変わり、文法問題がすべて廃止され長文問題になったことで、以前よりも英文法の学習がおろそかになる傾向にあります。私が大学生の頃に勤めていた塾では、アルバイトの大学生講師の中で、「共通テストで文法問題は出ないから、文法の勉強はいらない」と、生徒に主張する人がいたくらいです。
こうした意識が生徒に、そして一部講師・先生の中ですら存在するせいか、英文法の学習の延長にある、英文解釈が軽視されているように感じます。というのも、「『品詞』や『文型』を軸に、英文法の知識を使って英文の言わんとすることを読み解こう」という考えがすこしずつ薄くなり、「英語を英語で理解しよう」とか、「なんとなく意味が取れていればいい」「単語さえわかればいける」のような考え方が蔓延しつつあるのです。
でもね、私はなんなら、共通テストの方が英文法や英文解釈の勉強が生きると考えているんです。
英文解釈の目的とゴール
目的
英文解釈はその名をみてもわかる通り、「英文が言っていることを正しく解釈(理解)すること」が目的です。言ってしまえばこれだけなのですが、いまいちピンとこない人もいるでしょう。「いや単語分かればいけるやろ」って人も多いでしょうからね。こんな例文を見てみましょう。訳を考えてみてくださいね。
He made a mistake in his report secret.
この英文は、予備校講師の富田一彦先生という方が、正しい英文解釈の必要性について話すときによく使うものです。大学生時代にこの英文に出会い、よく英語が苦手だという生徒に和訳させてみました。それで大体の子たちは、こんな風に訳すんです。
こんなふうに訳をつくった人も多かったのでは?気持ちはわかりますよ。例えばね、make a mistakeの形が見えたら、「間違い(ミス)をする」って熟語が浮かぶ人が多いし、in his report secretも、まあ何となく「秘密のレポート」かなってなりますよね。
ここで重要なのは、in his report secretの部分です。「秘密レポート」なんて訳は絶対に無理なんですよ。だってそれなら、「in his secret report」という語順になるべきじゃないですか?例えば「面白い話」は「interesting story」であって、「story interesting」とは書かないですよね。
それでは正しく読み取るとどうなるのでしょう。
in his report secretは前置詞inを含んでいますね。前置詞というのは名詞とセットになってカタマリをつくるという性質があります(名詞の前に置く詞(ことば)で前置詞です)。名詞というのは、「~は」「~が」「~を」の「~」に当てはまる言葉です。report「レポート」なら、「レポートは」「レポートが」「レポートを」と自然に当てはまりますから、inのカタマリを()でくくると、
(in his report) secret
のように、secret「秘密の」という形容詞(名詞を詳しくする言葉)が余ってしまいます。
文型の話を軽くすると、Heが主語S、madeがVですね。これだけだと「何を?」madeしたのかわからないので、後ろにある名詞mistakeを目的語Oにします。そして、形容詞secretが余っているので、補語Cとして処理しましょう。補語Cになれるのは、形容詞か名詞だけなので、secretを補語とすることには何の問題もありません。
※ここらへんの「品詞」や「文型」についての内容は、以下の記事を見ると、簡単に理解できるので、まだ怪しい人は見ておくといいでしょう。
englishmate1031.hatenablog.com
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さて、ここまでの内容を総合すると‥
のように、文構造を分析できます。第五文型であるSVOCの形をとると、基本的に訳は「OをCにする」になります。よって、本当の訳は…
He made a mistake in his report secret. 彼は、彼のレポートの中のミスを秘密にした
となるんです!当初考えていたものとは、だいぶ内容が変わりましたね!もう一度だけ英文を見てください。特に高校生以上の方は、知らない単語なんて1つもなかったのではないでしょうか。それなのに、英文が正しく読めないときがあるのです。知らない単語が出てきたらなおさらでしょう。
このように、単語を知っているだけでは、正しく英文を理解することができません。1つ1つの英文としっかり向き合い、書き手のメッセージを正しく解釈すること、それが英文解釈の目的なのです。
英文解釈のゴール
「英文解釈はどこまでやればいいのか」。英文解釈の目的について以上に、聞かれることの多い質問です。まあ志望校のレベルによって、その「どこまで」は変わるのですが、どのレベルの人にも共通して持ってほしい意識があります。
英文解釈はそろばんに似ている
私が示す英文解釈のゴールとは、「自分が読むべき英文に対して『エア英文解釈』ができる状態」です。「エア英文解釈」というのは、本文に特に書きこんだりしなくても、頭の中で文構造が瞬時に浮かぶような状態です。
なんかこの状態、そろばんに似ているなって思うんです。というのも、そろばんがめっちゃできる人って、もうそろばん本体なくても、まるでそこにそろばんがあるかのように、指を動かして計算しますよね。まさにあれです。あれをやってほしいんです。
英文解釈の参考書を進めるときには、おそらく本文にSVOCやその他の記号などを書き込んで、文構造を視覚的に把握する訓練を行うことになります。方法のやり方に微々たる差はあれど、基本的にはこのようにして学習を進めていくのです。これをいつしか、もう書き込まなくても、文構造がみえる!という状態になってほしいんです。
最近の大学入試英語、特に共通テストは、時間の制約がめっっっっっっっっっっちゃ厳しいんですよ。センター試験の時代に比べて、時間が足りない!という人が何倍にも増えています。実際、最後まで解き終わらない人が、たとえ上位層であっても続出しているんです。そんな、厳しい時間の制約の中で、全部の英文に書き込んでいたら時間がいくらあっても足りません。よほど難しい文でない限りは、頭の中で解決する必要があります。
参考書は何周もしなさい!
英文解釈の参考書を使って、最終的なゴールを設定するなら、やはり載っている英文を全て「エア英文解釈」できる状態にすることです。別に一度見たことある文でいいんです。その参考書が示す正しい方法で、「エア英文解釈」ができるまで、なんどでも集会して下さい。数周する程度ではまず身につきません。なんどもなんども同じ英文と向き合って、力をつけることを心がけてください。
おわりに
「英語を英語で理解しよう」「なんとなく意味が取れていればいい」「単語さえわかればいける」のような考え方では、正しく英文は読み取れません。正しい英文解釈、そして「エア英文解釈」こそ、われわれ第二言語学習者が目指す所なのです。