レクシプローラの英語放浪ブログ

あなたの英語の「わからない」と「なぜ」に答える英語学習ブログです。

【英文法】なぜ驚くは「be surprised」なのか。感情と受け身の関係を理解して、ついでに試験に生かそう!

 

言語と感情

まずは以下の例文を見てください。


よく見る文ですね。この程度であれば中学英語でも習います。be surprised at~で「~に驚く」です。ところが、英作文で出すと、途端に書けなくなる人が続出するんです。というのも、I surprised at the news.って書くんですよ。

 

今回は、英語という言語で、人間の感情はどのように考えられているかを理解しましょう。

 

感情は受け身であらわす

そもそもの「感情」について考える

まず、もう一度、さっきの例文を見てみましょう。

 

 

be動詞のwasがあって、~edの形のsurprisedが見えるので、「be動詞+過去分詞」で「受け身」の形になっているのがわかりますか?訳は「驚いた」なのに。

 

なぜ受け身なのかを考えましょう。こんな状況を想像してみてください。

 

あなたが家に帰ってドアを開けると、中で待ち伏せていた私が「わぁっっ!」と大きな声で言ってきました。あなたはこの時何と言いますか?

 

おそらく99%「うわ!びっくりした!」ですね。さて、あなたは本当に「びっくりした」のでしょうか。

 

例えば、あなたは今日朝食を「たべました」し、学校にも「行きました」。このあと「お風呂に入る」人もいるし、「勉強する」人もいるでしょうね。さて、「たべる」「行く」「お風呂に入る」「勉強する」というような「行為」は、すべて自分の意志で実行するものです。気づいた学校へ行ってたり、知らないうちにお風呂に入っている人なんていませんからね。自分がやろうと思って、その行動をとっているわけです。とすれば、「驚く」というのは、本当に正しい表現なのでしょうか。だって、「~する」という行為は自分の意志でやるものであるはずなのに、驚こうと思っても驚けないんです。いや確かに、驚いた演技はできますよ。でも本当に驚くということを、自分の意志でやることなんて不可能です。

我々が驚くためには、驚かせてくれるものが必要です。例えば、さっき上げた例だと「私」で、それに驚かされたのは「あなた」です。「あなた」はあくまでも驚かされた側なので、「~される」という意味で使う「受け身」によって、その表現をするのです。

 

文法的にも考えてみる

辞書でsurpriseを引いてみましょう。こんな風に出てきます。

出典:ジーニアス英和辞典 第5版


やはり「驚く」ではなく、「驚かす」です。当然「何を?」と聞けるので、驚かす対象を目的語にとる他動詞なわけですね。

冒頭でこんな例文を挙げました。

 

 

これはもともとは…

 

 

なんです。この文の目的語であるmeを主語にして、受け身の文に書き換えたときに、be surprised atの形になっているわけです。もともとが他動詞であることを知れば、人(驚かされる側)が主語になって、受け身のような形になることにも納得がいくでしょう。英語には「驚く」という行為を表す言葉はなく、あくまでも「驚かす」を軸に表現を作っているのです。

 

他の感情の動詞

ほかの感情系の動詞についても、受動態か能動態かという点でとらえなおしてみましょう。

excitedとexciting

中学あたりでならったこの2つの単語ですが、意味は、excitedは「わくわくして、興奮して」、excitingは「興奮させる、刺激的な」です。違いは「人が主語ならed」「物が主語ならing」と習いませんでしたか?実際に、私が担当する生徒も、初めはこう習ったと答えていました。この覚え方はちょっと良くないですね。

surprisedにも同じことが言えますが、edやingがついてあるということは、もともとは動詞があったということです。辞書でexciteを調べてみましょう。

 

出典:ジーニアス英和辞典 第5版


やっぱりsurpriseと同様に、「興奮させる」という他動詞です。だから、これを現在分詞にしたexcitingは「興奮させている」だし、過去分詞excitedは「興奮させられた」なんですよ。別に訳とかどうでもいいんです。元の動詞にingが付いたり、edが付いたりしているだけです。人か物かなんて関係ないですよ。「興奮させる」人だっているかもしれませんから。

 

例)

▶下線部はただの現在進行形

⇒私に対して(to me)、that propositionはわくわくさせていない

 

▶下線部はただの受け身

⇒映画に行くことに対して、わくわくさせられている

 

あれexcitingって「わくわくして、興奮して」「興奮させる、刺激的な」どっちだっけ?となるくらいに、この2つの訳は相当に紛らわしいです。だからもう覚えるのいったんやめましょう。わくわくしているのか、わくわくさせられているのか、それだけです。

 

boredとboring

boredは「うんざりした、退屈した」、boringは「退屈な」です。いや紛らわしすぎますねさすがに。

boreも同じように辞書で引きましょう。

出典:ジーニアス英和辞典 第5版

やっぱり他動詞ですね。例文と一緒に2つの違いを見ましょう。

▶下線部はただの受け身

⇒彼の講義に退屈させられた

 

▶下線部はただの現在進行形

⇒この本は(私を)退屈させている

 

結局は「退屈させているか」「退屈させられているか」、その違いです。主語がどうとか、訳が紛らわしいとか、そんなのはどうでもいいのです。文の構造と、立場が分かれば、訳は非常に簡単です。

 

 

語の推測の手段が1つ増える

以上の知識が、語の推測に役立つときがあります。以下の文章を読んでみましょう。

出典:高知大学2016

実際に問題として出たわけではありませんが、enthralledの意味を知っている受験生はほぼいないでしょうから、いままでの知識を生かして、これを推測してみましょう。完全にあてるのは無理でも、何となくこんな意味かな?くらいまではいけますよ。

 

さて、why Ramirez family and everyone else are enthralled by the giant panda cubとありますね。are enthralled byの形から受け身であること、そして Ramirez family and everyone elseつまり「Ramirezの家族とほかのみんな」という人が主語になっていることから、「人が~される」までわかります。このことを根拠に、例えば、I am surprisedのように、enthralledはもしかしたら「感情」に関わる動詞なんじゃ?と推測します。もちろん違う可能性はあります。けどわからない単語が出てしまった以上は、ある程度ヤマをはるべきです。

 

では、どんな感情でしょか。まずはポジティブな感情か、それともネガティブかを考えましょう。

 

第1段落目には、「JorgeとMaria Ramirezとその6歳の息子は、ジャイアントパンダの赤ちゃんを見ながら笑っている。彼らは動物園で、歩けるようになったパンダの赤ちゃんを見ている大群衆の中にいた。」とあります。どうやら動物園で、可愛いパンダの赤ちゃんを見ているようです。もうこの時点でなんだかポジティブな感情を抱いてそうですね。

 

問題となる第2段落の一文目には、わからない単語はそのままにするとして、こんなことが書いてあります。

「専門家によれば、ラミレス一家をはじめ、誰もがジャイアント・パンダの子にenthrallされるのには理由があるという。」

誰もがパンダに「~される」ということは、つまり、パンダに対して誰もがなんらかの感情を抱くということです。第1段落から、butやhoweverなどの逆接の接続詞(または接続副詞)が使われたわけでもないので、すくなくともパンダに対するネガティブな感情はないでしょう。よってポジティブな感情としてとりましょう。

 

パンダに対して抱くポジティブな感情なら、例えば、「ほっこりする」「幸せな感じがする」「ひきつけられる」「魅了される(うっとりする)」などでしょうか。無限にある感情表現から、ここまで絞れたならもう十分でしょう。だいたいそんな意味だろうと思っておけばいいのです。

 

試しに辞書でenthrallとenthralledをひいてみました。すると…

出典:ジーニアス英和辞典 第5版

とありました。「魅了される」と言い換えて差し支えないでしょう。こうやって、文法や語法についての理解が、未知の語に対する予測につながっていくこともあるのです。すこしでも英語と向き合う上で有利になるなら、覚えておいて損はないでしょう。

 

おわりに

英語と日本語では、感情にたいするとらえ方が根本的に違います。感情は、人間の意志による行動ではありません。そう思わせるものがあって始めて、私たちの感情は表出するのです。人だから、物だから、という覚え方ではなく、もっと根本的な部分で理解しましょう。