冠詞(a,the)とはなにか
英語における「冠詞」とは、名詞の前につくa. an やtheのことを指しています。文法書を開くと、よくa(an)には不定冠詞、theには定冠詞という名前が付けられていますね。小難しい文法用語を暗記する前に、まずはそれらの冠詞について、本質的な部分から理解していきましょう。
aとtheはどう違うのか
さて、まずはa(an)とtheにはどのような違いがあるかについて理解していきましょう。感覚でいいので、以下の問題を解いてみてください。
あなたは、学校の生徒です。窓際の席に座るあなたは、英語の授業中にALTの先生から、暑いから教室の窓を開けてほしいという内容を、英語で伝えられました。その時にALTの先生が話す英語として、適切なのはどちらでしょうか。
A:Open a window. B:Open the window.
正解はBです!なんとなくBだと思った人が多数派なのではないでしょうか。私が生徒に冠詞を教えるときによく出す問題なのですが、9割くらいの子たちがBを選んでくれます。なんとなくそっちの方が自然な感じがするそうです。
さて、ではなぜBが正解なのでしょうか。先にa(an)とtheについて理解しましょう。ズバリこれら2つのポイントはこれです!
a(an)は、「1つ」という条件ならなんでもOKの時に使います。例えば、筆箱を忘れて、何でもいいからボールペンを貸してほしいときには、ペン一本もらえれば、種類などはなんでもいいので、I need a bollpoint pen.のように表現します。
一方でtheは、「話し手と聞き手の共通認識」がある場合に使います。つまりは、話している人と聞いている人が、同じものものを認識できるときです。例えば、放課後に友達と学校の図書館で勉強したいと思って、「図書館で勉強しよう」と誘う場合には、おそらく友達も、そしていうまでもなく自分も、日本全国の図書館の中から自分たちが通う学校の図書館を思い浮かべるはずです。いきなり沖縄の図書館に行くことになんてなりませんからね。そのため同じ図書館を思い浮かべているはずなので、Do you want to go to the library?のように表現できるわけです。
冒頭で、文法書では、a(an)には不定冠詞、theには定冠詞という名前が付けられていると言いましたね。不定冠詞という名前は、「1つ」なら何でもOKという性質は、言い換えればどれかは特定できないということであるため、そこに由来しています。一方で、定冠詞は、すでに話し手と聞き手で思い浮かべるものが決まっている(定まっている)ときに使うので、こうした名前がついているのです。
それでは先ほどの問題に戻ってみましょう。状況としては、窓際の席に座っていて、窓を開けてと言われています。このとき、開ける窓は、ALTの先生も、そしてあなたも、あなたが座っている横にある窓だと考えるのが自然です。まさかいきなり家に帰って、自分の家の窓を開けて、「はい窓をあけました」なんてことには絶対になりません。よって、話し手(ALT)と聞き手(あなた)が同じ窓を思い浮かべたので、正解はthe windowと表現したBになるのです。
長文読解でどう生かせるのか
では、冠詞がわかるとどうして長文が読みやすくなるのかを学んでいきましょう。
a(an)が役立つ場合
まずはa(an)についてです。以下の英文を読んで、問題に答えてみてください。今回は冠詞についての内容なので、わからない単語などは調べてOKです。
さて、下線部にはA skillhul early-years practitinoerとありますね。問題文から、おそらくpractitinoerは教師のことなのでしょう。冠詞のaが使われているので、もう一度思い出しましょう。
a(an)➡「1つ」ならなんでもOK
でしたね。「1つ」なら何でもOKという性質は、言い換えればどれかは特定できないということであるので、不定冠詞という名前がついているのでした。特定できないということについて、もう少し考えてみましょう。
特定できないということはつまり、話し手と聞き手と間には共通認識がないことになります。話している人はもうその名詞について当然知っているでしょうが、聞き手である私たちはそれを知らない、そんな状況でa(an)が使われているのです。ということは、まだ聞いている(読んでいる)人が知らなそうな名詞に、不定冠詞a(an)が使われるということです。ここまでで、a(an)は「未知を示す冠詞」と言い換えてもいいでしょう。
それでは問題の解説に移ります。問題文には、「下線部はどのような教師のことを指しているか」です。よって、A skillhul early-years practitinoerの情報が今必要になります。では、その情報はどこに書いていると思いますか?未知を示す冠詞aが使われたということは、A skillhul early-years practitinoerまで文を読み進めても、読み手である我々はそれが何かがわからないということです。よって、この後にその情報がくると、ここで確定しています。
ということは、文章を読む前に問題文を読んで、冠詞aが見えていれば、根拠は下線部より後ろの文にあることが確定するということです。ただでさえ時間がない長文読解では、こうした観点があるとかなりの時間の節約になります。
それでは、下線部より後ろの英文に注目しながら一文を読んでみましょう。
A skillful early-years practitioner will know when to intervene to guide and extend the opportunity to learn, but also when to step back and let it unfolded naturally.
熟練した幼児教育実践者は、子供の学びの機会に対していつ介入し、広げるべきかだけではなく、いつ一歩引いて、自然に展開させるべきかも知っている。
こんなふうに書いてありました。未知の冠詞であるaの性質から、A skillful early-years practitionerの後ろの内容が、今回の答えでしょう。よって、when~naturallyの部分を根拠として、模範解答は以下のようになります。
解答:子供の学びの機会に対していつ介入し、広げるべきかだけではなく、いつ一歩引いて、自然に展開させるべきかも知っている教師
繰り返しますが、冠詞のa(an)が使われたということは、読んでいてもまだその情報が出てきていないということです。こうした未知を示すような性質を知っていれば、長文読解がとても楽になります。
theが役立つ場合
次は茨城大からの出題です。今回は下線部にtheが使われていますね。theの性質は…
話し手と聞き手(書き手と読み手)の共通認識
でした。これも少し違った覚悟で見直してみましょう。
話し手と聞き手が、同じものを共通認識できる状況とはどういう状況でしょうか。それは、もうすでに、それについての情報が出ているということです。下線部にはthe applicationsとありますが、theが付いたということは、書いている人も、そして読んでいる我々も、applicationsが何かを知っているはずなんです。共通認識ですからね。つまりtheは「既知を示す冠詞」と言い換えることができます。
こうなるとあとは簡単で、the applicationsって何だろうと思ったなら、その前に書いてある文を見ればいいのです。だって、前の文に説明がないなら、既に知っている状態にはなりませんからね。というわけで、前の文を見てみましょう。
In another part of the plant, where LP’s song “Lost on You” hums across the floor, a different lightweight robot arm evenly applies a thick black glue to the edge of small car windows.
別の工場、LPの「Lost on You」という曲がフロア中に流れていて、別の軽量ロボットアームが黒い厚い接着剤を小さな車の窓の縁に均等に塗っている。
と書いていますね。theが「既知を示す」という性質から、これがapplicationsについての情報なのでしょう。よって模範解答は…
解答:軽量ロボットアームが黒い厚い接着剤を小さな車の窓の縁に均等に塗ること。
となります。
もう一度それぞれの冠詞の性質を整理しよう。
これまでの内容を総合して、冠詞は以下のように理解できます。
冠詞については、ここでそのすべてを語り切れるものではありません。冠詞だけを扱った書籍がいくつも出るほどに、これは奥が深いものなんです。ただ、先にこうした理解を持っておくと、今後長文読解をするときにも役立つし、新たに冠詞について理解するときにも大いに役立つでしょう。
最後に、冠詞についてもっと知りたい人におすすめの書籍を以下に掲載します。ここまでお疲れ様でした!
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